1. 回数券は得か損か:決め手は「通う間隔」

回数券は、何回分かの料金を先にいただき、来店のたびに1回ずつ使っていただく売り方です。お店にとっては、先にお金が入る・次の来店の約束になる、という良い点があります。一方で、値引きした分だけ1回の売上は下がり、使い終わるまでは「まだ施術していないお金」を預かっている状態になります。

得になるか損になるかを分けるのは、そのメニューの通う間隔です。

メニューの形回数券との相性理由
通う間隔が短く、回数の目安があるメニュー(顔のケア・ヘッドスパの集中ケアなど)合う数か月で使い切れる。次の予約が自然に決まる
間隔が1〜2か月のメニュー(カット・カラー)合いにくい使い切るまで1年近くかかり、期限・転居・休業のときに返金の話になりやすい
1回ごとに内容が変わるメニュー(パーマ・縮毛矯正など)合いにくい1回の料金が毎回違うと、券の1回分を決めにくい

たとえば、来店の間隔が41日のお客様(銀座のLUJUの2回目以降の平均)がカットの6回券を買うと、6回目の来店は約7か月後(41日×5回分の間隔)です。顔のケアのように1〜2週間おきに通う目安があるメニューなら、同じ6回でも1か月半〜2か月半ほどで終わります。

CHECK POINT 01回数券が得になるのは、通う間隔が短く、回数の目安があるメニュー。カットやカラーの回数券は、期限と返金の話がこじれやすくなります。

2. 割引率の決め方:1回で残るお金から逆算する

回数券の割引は「何%なら売れるか」より先に、「1回あたりいくら残るか」で決めます。材料費が料金の1割ほどの、1回12,000円のメニューで計算すると、次のようになります。

売り方の例お支払い1回あたり割引率1回で残るお金(材料費約1,000円を引く)
1回ずつ12,000円12,000円—約11,000円
3回券(5%引き)34,200円11,400円5%約10,400円
4回券(10%引き)43,200円10,800円10%約9,800円
5回分の料金で6回60,000円10,000円約17%約9,000円

「5回分の料金で6回」はお得に見えますが、1回で残るお金は1回ずつのときより約2,000円少なくなります。6回では約12,000円、つまりちょうど1回分を、お店が負担している計算です。

割引の下限を決める式

1回で残るお金(料金−材料費)が、その時間に入れられるほかのメニューで残るお金を下回らない値段が下限です。たとえば同じ1時間で、ほかのメニューなら約1万円残るなら、回数券の1回分は「材料費+1万円」より下げないようにします。

CHECK POINT 02割引率は「1回で残るお金」から逆算する。値引きした分は、来店が確実になることとの引き換えだと考えます。

3. 回数券を売る前に確かめる2つの法律

1.有効期限が6か月を超えるなら、資金決済法を確かめる

回数券のように先にお金をいただき、あとで使っていただく券は、資金決済法の「前払式支払手段」にあたることがあります。財務局の案内では、有効期間が6か月未満で、券面に発行日と有効期限を書いてあるものは、登録や届出がいりません。

6か月以上の期限にする場合も、自分のお店だけで使える券(自家型)で、毎年3月末と9月末の「まだ使われていない残高」が1,000万円以下なら届出はいりません。1,000万円を超えると、残高の2分の1以上を供託して、2か月以内に届け出る決まりです。小さなサロンでこの額に届くことは少ないですが、期限を決めるときの目安になります。

2.顔の施術で「1か月超・5万円超」なら、特定商取引法を確かめる

特定商取引法では、人の皮膚を清潔にし美化する施術などの「エステティック」で、期間が1か月を超え、金額が5万円を超える契約を「特定継続的役務提供」としています。当てはまると、契約の前と後に決まった書面を渡すこと、8日間のクーリング・オフ、途中で解約されたときの精算の上限などの決まりがかかります。

顔のケアの回数券が当てはまるかどうかは、メニューの中身と契約の形で変わります。迷うときは、先に消費者庁の案内を読み、お近くの消費生活センターに確かめてください。設計の段階でできることとしては、1枚の券の合計を5万円以下にする方法があります。上の表の「4回券(10%引き)43,200円」は、この金額の条件にはかかりません。

CHECK POINT 03期限は6か月未満にして券面に書く。顔の施術は1枚5万円以下にすると、法律の確認がぐっと楽になります。

4. 前受け金の扱い:売ったときの売上ではない

回数券の代金は、売った日にはまだ施術をしていないので、帳簿の上では「前受け金(お預かり)」として扱い、使っていただくたびに1回分ずつ売上にするのが基本です。法人の場合、国税庁の通達(法人税基本通達2-1-39)でも、券と引き換えに施術をした日の事業年度の収益にすることが原則とされています。

同じ通達では、有効期限が来ても使われなかった分は、その期限が来た事業年度に収益にすることになっています。期限のない券は、発行から10年がたった年度までが区切りです。個人事業の方の扱いや、レジの設定のしかたは、顧問の税理士に確かめてください。

  • 売った月の売上が大きく見える:レジで売った日に売上として入れると、翌月以降の売上が実際より少なく見えます
  • 使い切るまでの残りを一覧にする:お客様ごとに「何枚目まで使ったか」をカルテに書いておくと、期限前のご案内も、閉店や移転のときの精算もできます
  • 返金の決まりを先に書く:転居・妊娠・体調などで通えなくなったときの返金のしかた(使った回数は1回ずつの料金で計算する、など)を、券を売る前にお伝えします
CHECK POINT 04回数券のお金は「預かっているお金」。使い切るまでを管理できる仕組みと、返金の決まりをそろえてから売ります。

5. 回数券が合うメニューの例:顔のケア

回数券が合うのは、最初の数回を短い間隔で通っていただくメニューです。たとえばララピールは、最初の5〜6回を1〜2週間おき、そのあとは2週間〜1か月おきに受けていただく流れです。最初の4回を1枚の券にすると、1〜2か月ほどで使い切れる計算になります。

計算数字メモ
通常コースの料金12,000円相場は10,000〜12,000円
4回券(10%引き)43,200円5万円以下
4回で残るお金約39,200円材料費 約1,000円×4回を引く
使い切るまで約1〜2か月1〜2週間おき

回数券にしなくても、次のご予約に特典をつける方法もあります。銀座のLUJUでは、次回のご予約で10%引き、または30日以内にもう一度ララピールを受けると3,000円引きの、どちらか1つをお付けしています。先にお金をお預かりしないので、前受け金の管理がいりません。どちらが合うかは、お店の会計のしかたで選んでください(次回予約率を上げる特典の決め方)。

CHECK POINT 05通う目安が決まっているメニューなら、4回券や次回予約の特典で、続けて来ていただく流れを作れます。

6. 自分のサロンで、回数券にするかを数字で決める

回数券にするかどうかは、メニューの通う間隔・1回で残るお金・お店の会計のしかたで決まります。値引きの前に、まず1回の単価を上げる方法もあります(客単価を無理なく上げる方法)。

サロン診断では、スタッフの人数・メインのメニュー・月の売上と客数など6つの質問から、ララピールを入れたときの売上の見込みをレポートでお届けします。回数券や次回予約の特典をどう組むかは、レポートから予約できるオンライン面談でご案内します。

7. よくある質問

美容室の回数券の割引率はどのくらいが目安ですか?

決まった相場はありません。1回の料金から材料費を引いた「1回で残るお金」が、その時間にほかのメニューで残るお金を下回らない範囲で決めます。材料費が1割ほどのメニューなら、5〜10%引きでも1回で残るお金は大きく減りません。

回数券に有効期限は必要ですか?

期限を決めておくと、残りの管理と返金の話がしやすくなります。財務局の案内では、有効期間が6か月未満で、券面に発行日と有効期限を書いた券は、資金決済法の登録や届出がいりません。

回数券の代金は売った月の売上ですか?

帳簿では前受け金として扱い、使っていただくたびに売上にするのが基本です。法人は国税庁の通達(法人税基本通達2-1-39)で、施術をした日の事業年度の収益にするのが原則です。個人事業の扱いは税理士に確かめてください。

顔の施術の回数券で気をつけることは?

期間が1か月を超え、金額が5万円を超える顔の施術の契約は、特定商取引法の「特定継続的役務提供(エステティック)」にあたる場合があり、書面やクーリング・オフの決まりがかかります。1枚の合計を5万円以下にするか、消費者庁の案内と消費生活センターで確かめてから売り出してください。

出典・参考にした資料

  1. 消費者庁「特定商取引法ガイド 特定継続的役務提供」
  2. 財務省中国財務局「商品券等の発行をお考えの方へ」
  3. 資金決済に関する法律 第4条・第5条(e-Gov 法令検索)
  4. 国税庁「法人税基本通達 第2章第1節第6款(2-1-39 商品引換券等の発行に係る収益の帰属の時期)」

※料金・材料費・施術時間は公式資料(2026年時点)と導入サロンの例です。数字は目安と計算の例で、売上や来店数を約束するものではありません。実際の提供内容と条件は、導入相談のときにご案内します。