1. 美容室の赤字の割合:平均は損益分岐点に約3%届かない

「うちだけ赤字なのでは」と感じたら、まず全国の数字と比べてみます。日本政策金融公庫は、お金を貸した小さな会社(法人・働く人50人未満)の決算書から、業種ごとの数字を2年に1度まとめています。2025年度の美容業は555社が対象でした。

数字全体の平均黒字の会社の平均真ん中の会社(中央値)
損益分岐点比率103.0%96.0%100.4%
売上に対する営業利益−1.9%5.1%0.1%
売上総利益率(材料などを引いた残り)84.4%84.8%87.6%

損益分岐点比率は「黒字と赤字の境目の売上÷今の売上」です。100%を超えると、今の売上が境目に届いていない、つまり赤字です。平均は103.0%、真ん中の会社でも100.4%で、ちょうど境目のあたりにいます。黒字で自己資本もプラスの会社(238社・約4割)の平均は96.0%で、売上が境目を4%ほど上回っています。

お店の大きさで見ると

働く人の数損益分岐点比率売上に対する諸経費(家賃など)
1〜4人104.3%40.4%
5〜9人102.2%34.5%
10〜19人103.5%32.9%
20〜49人99.7%30.7%

働く人が20〜49人のお店だけが100%を下回り、1〜4人のお店は104.3%といちばん高くなっています。小さなお店ほど、家賃などの決まった経費が売上に対して重いためです。

※法人の数字です。法人ではオーナーの給料が人件費に入るため、赤字でもオーナーの収入がないという意味ではありません。

CHECK POINT 01美容室の損益分岐点比率は平均103.0%。黒字と赤字の境目に、売上があと約3%届いていないのが平均の姿です。

2. 美容室が赤字になる原因:材料費ではなく決まった経費

美容業の売上総利益率は平均84.4%で、材料などの原価は売上の約16%です。材料費を1割削っても、売上の1.6%ほどしか変わりません。赤字の多くは、材料費ではなく、次の決まった経費に対して売上が足りないことから生まれます。

  • 家賃・光熱費・リース代:お客様が少ない月でも同じだけかかる
  • 人件費:スタッフの給料は、予約が空いていても払う
  • 予約サイト・広告の掲載料:新規の集客にかかる、毎月決まったお金

決まった経費が重いお店は、売上が少し落ちただけで赤字に傾きます。売上が落ちるきっかけは、近くに新しいお店ができる、来店の間隔が伸びる、閑散期に入るなどです(美容室の閑散期はいつ?)。

CHECK POINT 02原価は売上の約16%。赤字の原因は、材料ではなく「決まった経費に届かない売上」です。

3. 損益分岐点の計算:自分のお店の「境目の売上」を出す

損益分岐点売上決まった経費÷(1−材料費率)
損益分岐点比率損益分岐点売上÷今の売上×100
境目に必要なお客様の数損益分岐点売上÷客単価

1人で営むお店を例に計算します。決まった経費は、家賃・光熱費・掲載料などに、オーナー自身が生活に必要な額を足したものとします。

計算(例)数字メモ
決まった経費月50万円家賃・光熱費・掲載料・オーナーの生活費など
材料費率15%美容業の平均の原価(約16%)に近い例
損益分岐点売上約58.8万円50万円÷0.85
客単価8,000円のとき、境目のお客様の数74人58.8万円÷8,000円
今の売上(例:69人)55.2万円69人×8,000円
損益分岐点比率約107%58.8万円÷55.2万円
月の不足約3.1万円55.2万円×0.85−50万円

※計算の例です。自分のお店の決まった経費・材料費率・客単価に置きかえてください。この例では、あと5人来ていただくか、1人あたりの単価を上げるか、経費を3万円ほど下げると、境目に届きます。

CHECK POINT 03境目の売上を出すと、「何人・いくら足りないか」が具体的な数になります。ここから打ち手を選びます。

4. 黒字に戻す順番:4つの打ち手を比べる

上の例(月の不足 約3.1万円)を、4つの方法で埋めた場合を比べます。

方法必要なこと気をつけること
決まった経費を下げる月約3.1万円の経費を見直す掲載料・リース・使っていない契約から。家賃は簡単に下がらない
お客様を増やす月5人多く来ていただく集める費用と時間。初回割引の方が2回目に来ないと赤字が増える
値上げする客単価を約530円(約7%)上げる離れるお客様が出たときの計算が要る
1回の来店にメニューを足す残るお金1.1万円のメニューを月3回放置時間など、今の時間に重ねられるか

1.まず経費の「払いすぎ」を止める

最初に見るのは、使っていない契約・効果の分からない掲載料・重複している道具のリースです。ここは売上を動かさずに確実に効きます。ただ、家賃と人件費は急には下げられないので、経費の見直しだけで赤字が消えることは多くありません。

2.今のお客様の来店の間隔を守る

新しいお客様を探す前に、今のお客様が次に来るまでの間隔を見ます。間隔が伸びると、同じ人数でも1年の来店回数が減ります。次のご予約をお会計の前にいただくことが、いちばんお金のかからない打ち手です(次回予約率を上げるには?)。

3.1回の単価を、時間を延ばさずに上げる

値上げは1回で効きますが、全員の料金が変わります(美容室の値上げはいつ・いくら?)。もう1つの道は、受けたい方だけが選べるメニューを足すことです。材料費が軽く、カラーの放置時間のように今ある時間に重ねられるものなら、決まった経費を増やさずに、残るお金だけが増えます。

4.新規の集客は、境目を超えてから強める

赤字のうちに広告を増やすと、決まった経費がさらに重くなります。新規の集客は、今のお客様で境目を超え、2回目に来ていただく仕組みができてから強めるほうが、お金が残ります。

CHECK POINT 04順番は「経費の払いすぎ→来店の間隔→1回の単価→新規」。お金のかからない順に手をつけます。

5. 1回の単価を足すメニューの例:ララピール

3つ目の打ち手で、美容室で導入されているのがララピールです。機械を使わない顔のケアで、カラーと同じ日にでき、カラーの放置時間(20〜30分)に重ねられます。通常コースは1回10,000〜12,000円で、材料費は料金の1割ほどです。

計算(例)数字メモ
1回で残るお金約11,000円12,000円−材料費 約1,000円
上の例の不足(約3.1万円)を埋める回数月3回3回×約11,000円=約3.3万円
月69人の3割が受けた場合約23.1万円21人×約11,000円

※計算の例です。導入しているサロンでは、いつものお客様の平均3割がララピールを注文しています。数字は目安で、売上を約束するものではありません。

導入費用の中には約100名分の施術の材料が入っているので、始めてしばらくは材料を買い足さずに回せます。導入できるのは、美容師免許があり、美容所で施術できる方です。費用の考え方は導入費用と、1回の施術で残るお金にまとめています。

CHECK POINT 05決まった経費を増やさずに、1回で約1.1万円が残る。月3回で、例のお店の不足が埋まる計算です。

6. 自分のお店の境目を、数字で確かめる

赤字を黒字に戻す第一歩は、自分のお店の損益分岐点売上を出すことです。境目が分かれば、あと何人、あといくら、が決まり、打ち手を選べます。

サロン診断では、スタッフの人数・メインのメニュー・月の売上と客数など6つの質問から、ララピールを入れたときの売上の見込みをレポートでお届けします。お店に合う組み方は、レポートから予約できるオンライン面談でご案内します。

7. よくある質問

赤字の美容室の割合はどのくらいですか?

日本政策金融公庫の2025年度の調べでは、美容業555社のうち、黒字で自己資本もプラスの会社は238社(約4割)でした。損益分岐点比率は平均103.0%、真ん中の会社で100.4%です。

損益分岐点比率とは何ですか?

黒字と赤字の境目の売上を、今の売上で割った数字です。100%を超えると今の売上が境目に届いていない(赤字)、100%を下回ると黒字です。

材料費を削れば赤字は消えますか?

美容業の原価は平均で売上の約16%なので、材料費を1割削っても売上の1.6%ほどしか変わりません。赤字の多くは、家賃や人件費などの決まった経費に対する売上の不足から生まれます。

赤字のときに広告を増やしてもいいですか?

広告は決まった経費を重くします。先に今のお客様の来店の間隔と1回の単価で境目を超え、2回目に来ていただく仕組みを作ってから強めるほうが、お金が残りやすくなります。

出典・参考にした資料

  1. 日本政策金融公庫「小企業の経営指標調査」2025年度調査 業種別経営指標(美容業)
  2. 日本政策金融公庫「小企業の経営指標調査」2025年度調査 従業者規模別経営指標(美容業)
  3. 日本政策金融公庫「小企業の経営指標調査 利用の手引き」

※料金・材料費・施術時間は公式資料(2026年時点)と導入サロンの例です。数字は目安と計算の例で、売上や来店数を約束するものではありません。実際の提供内容と条件は、導入相談のときにご案内します。